レギューレーションとは
フラスタの話題に触れる際、しばしばレギュレーションという言葉を目にすることがあります。
レギュレーションとは、フラスタや楽屋花を出す際に、公式サイトやSNS等で発表される決まりごとのことです。
2021年2月に行われる「にじさんじ Anniversary Festival 2021」では、公式サイトのFAQにある、「イベントに関して」というところに、フラワースタンド、楽屋花の送付は可能ですか?という項目があり、そこに記載があります。
イベントによって内容は異なりますが、祝い花を出す時の注意や、納品・回収の日時、サイズ規定などが主な内容となります。
今回の案内では推奨サイズとして幅(底辺)40cm×40cm以下、高さ(全体)180cm以下という記載があります。
フラスタのサイズ規定としては、他ジャンル含め、かなり多くの場面で出てくるこの底辺(底面)40cm×40cm以下、高さ180cm以下という内容ですが、初心者の方にはあまり耳馴染みがなく、どういうことなのか、なんだかよく分からないという方も多いかもしれません。
ということで、今回はこれらの項目について詳しく解説していきます。
底辺(底面)40cm×40cmの意味
底辺40cm×40cmというのは、お花屋さんがよく使う一般的なスタンドの脚を使って作ってください。とほぼ同義だと考えていいと思います。
一般的なスタンドの脚とは画像のようなもので、これを使用すると自然に底面がほぼ40cm×40cmになります。
(※画像のようなスタンドの脚でなくても、底面が40cm×40cm以内のものであれば、受け取りNGになることはまずないので、絶対にこれじゃなければいけないという意味ではありません)
規定されているのは底面部分のサイズのみで、フラスタ全体の横幅や奥行きを規定するものではありません。
時々「底辺」や「底面」という単語が省かれていることがあり非常にややこしいのですが、全体サイズ40cm×40cmのフラスタだと、実質何もできないに等しいので、この数字が出ている場合はほぼ間違いなく底面のことだと解釈していいと思います(逆に80cmや1mのような記載がある場合は、フラスタ全体の横幅を規定していることになります)。
どうしてこういうちょっと分かりにくい表現をするに至ったのかということですが、私の知っている範囲ですと、このようなサイズ規定が初めて大きなイベントで発表されたのは、10年ほど前のアイドルマスターのライブです。
サイズ規定が無かった時代、次第にフラスタのサイズや内容のインフレーションが起こっていき、ある時お正月用の大門松や、パチンコ屋さん等の新装開店で見かけるような花輪が贈られたことがあったそうです。
こういったことがあった次のライブからサイズ規定が発表されたそうなので、このままだと、さらに今までにないものが贈られてくる可能性があると感じた運営スタッフさんが、このような規定を作ったのかもしれません。
真相は関係者の方にしか分からないのですが、つまるところ一般的なスタンド花ではない、大きなテーブルや台を使用したものや、大門松や花輪などの特殊なもの等、想定外のものを持ってこないようにしてもらうためにこのような表現になったのだと思います。
高さ180cmの意味
高さ180cmというのはそのままの意味なので、あまり解説することはありません。
現在声優さんがたくさん集まって行うような大規模なライブだと、ほぼ間違いなく、180cmのところにラインの入った棒で高さを計測するスタッフさんがいます(もちろんソロイベント等でもあります)。
それよりはみ出ている場合は修正を要求され、その場で手直ししないと設置させてもらえません。
土台が2つに分かれている場合は、2つのフラワースタンドとして展示させていただきます。の意味
今回のにじFESでは、さらにその他禁止事項として、土台が2つに分かれている場合は、2つのフラワースタンドとして展示させていただきます。という記載があります。
こういう表記を見るのは初めてなので推測となりますが、これは複数基にまたがる連結系のフラスタはバラして置く可能性がありますよ。という意味だと考えられます。
土台がふたつというのは、先程とりあげたスタンドの脚がふたつという意味でしょう。
つまり、運営サイドとしてはスタンドの脚ひとつに対して、ひとつのフラスタという認識をします。
脚ふたつで1セットのデザインでも、それをセットでひとつという見方はしないので、バラして置かれても文句は言わないでくださいね。
さらに言えば、そのふたつを隣り合って置くかどうかも保証しないので、気をつけてくださいね。ということを言っているのだと思います。
どうしてレギュレーションを守らないといけないのか
さて、これらの決まりごとですが、どうしてこのようなものが出るか、皆さんは考えたことがあるでしょうか。
キャストさんを応援するためのものだし、会場が華やかになるのだから、大きくて派手なものがいっぱいあってもいいんじゃないか?そう思ったことはないでしょうか。
理由はふたつあると考えます。
ひとつはインフレの抑止。もうひとつは現場スタッフの作業負担軽減。です。
前者については先に述べた通りです。
そして後者についてですが、イベント当日における現場の運営スタッフさんは、主催(にじFESでいうにじさんじ)から委託された、イベントの運営を専門とする会社のスタッフさんです。
当日だけのアルバイトの方もたくさんいらっしゃいます。
ほとんど全ての方が、普段花の扱いなどしない素人の方で、そういった方がフラスタの受け取りや整理、場合によっては移動も行います。
ですが、凝ったフラスタはサイズが大きかったり、重量があったり、壊れやすい装飾があったりで、下手な運び方をすると簡単に崩れてしまいます(何度もそのような現場を目撃しています)。
そのような中で、連結のフラスタや特殊な台のフラスタがあったらどうでしょうか。
連結のフラスタは移動が非常に困難です。
本当に崩さずに移動させようとした場合、2つの土台(スタンドの脚)を同時に同じ高さに持ち上げ、同時に同じ速度で移動させないといけません。
そんなことはプロでも難しいです。
特殊な台のものも、運ぶことが困難な形状(重量)のものが多く、一度設置してしまうと動かすことが非常に困難になってしまいます。
そしてそのように取り扱いの難しいフラスタが何十基も来てしまったらどうでしょうか。
当初予定していたスペースに収まりきらなかったり、予定が変わってしまったりで、それらを全て移動させないといけなくなってしまったら…。
考えただけで恐ろしいです。
このようなイレギュラーな対応をなるべく減らすため、そういうものに関しては、一律で受け取りNGにしているのだろうと思います。
そういう特殊なものが来てしまうと、現場でのオペレーションがとても複雑になってしまい、予定していた時間や人数で開場までの作業が終わらなくなってしまう可能性があるのです。
ただでさえお花の扱いに慣れていない人が、現場での対応に困らないように、下手に扱って壊してしまったりしないように(そんなことでクレームを受けるのも運営会社さんになってしまうので)こういう規定がある。
そのように考えるのが、全ての方向で納得しやすいのではないかなと思います。
レギュレーションを守らないとどうなるのか
さて、ここまでレギュレーションの項目ひとつひとつについて述べてきましたが、ここからはその規定を守らないとどうなるのかについて書いてみたいと思います。
それを語るには、同じ道を歩んでいた過去の歴史から紐解くことがわかりやすいかもしれません。
時は2017年3月、たくさんの声優さんが集まって公演する某イベントで事件は起きました。
それまでもほとんどのイベントにおいて、サイズ規定は発表されておりましたが、それらが厳密に機能することはほとんどなく、それゆえサイズ規定が守られることはほとんどなく、ごく少数のお花屋さんを除いて、ほぼ形骸化していました。
なのですが、ついにそれは起こってしまいました。
フラスタ受付の際に、180cmの棒を持ったスタッフさんが全てのフラスタのサイズを測定し、守られていないものは全て修正するように、修正しないものは置けないということを名言したのです。
ほとんどのお花屋さんがその場で修正をすることになりましたが、納品時間にもリミットがあります。
ちょっとパネル位置を修正すれば規定に収まるくらいであればいいのですが、デザイン的に根本から直さないと収まらない場合もあります。
それをお客様に連絡し、どのように修正するかをその場で決め、そこで即座に修正をしていかないといけません。
すぐ連絡が取れないケースもあっただろうと思います。
さらにもっと大変なのは、搬入しているスタッフさんが配達専門で、ほとんどフラスタ制作スキルを持っていない場合です。
中々に阿鼻叫喚な現場だったように思います(ハナノキは持っていったフラスタ全て規定内だったので、修正無しで納品できたことも一応記しておきます)。
イラストパネルを前倒し(おじぎするような形)にして無理やり180cm内に入れたり、酷いものでは上の段を全部はずして、下の段とそこに差したイラストパネルだけみたいなものもあったように思います。
ということで、何をお伝えしたいかと言うと、今まで大丈夫だったから次も大丈夫ということはないということです。
それは歴史が証明しています。
Vtuber界隈のフラスタ文化が本格化するのは、私の観測範囲では2019年からです。
おそらくこれまで運営さんもフラスタの受け取りに関してはあまり経験がなく、なんとなくなぁなぁというか、とりあえず最低限の対応で、来たものを受け取るというスタンスだったのではないかと思います。
ですが、これだけVtuberのリアルイベントがたくさん行われ、その場に多数のフラスタが贈られることがわかってきた今、さすがに今まで通りの対応ではいかなくなっているように感じます。
現に、今回のにじFESではフラスタに関しての事前アンケートが行われています。
こんなことは他ジャンル含め、ほとんど記憶にありません(たまーに狭い会場でたくさんのフラスタが来ることが見込まれる場合に、数の把握の為の事前申告(場合によっては出せる人を抽選)みたいなことがありますが、これほどの大きなイベントでこういうことはほぼ記憶にありません)。
それだけ公式サイドもフラスタというものに意識を割いているのだと思います。
私の目からすると、今Vtuber界隈のフラスタで起きていることは、別ジャンルですでに通った道です。
その時は近い。と感じるのは私だけではないはずです。
推奨サイズという表現について
長くなってしまいましたが、ここまでにじFESの祝い花レギュレーションについて解説してきました。
最後に、今回のレギュレーションが、「推奨サイズ」という表記になっていることについて触れて終わりたいと思います。
推奨ということは、必ずしもその大きさを守らなくても大丈夫なようにもとれますが、但し書きとして、推奨サイズを大幅に超えるものは受け取れない場合があります。と書かれています。
大幅にという表現は非常に曖昧で、実際どれくらいまでなら受け取ってもらえるのか、とても分かりにくいですよね。
具体的にどれくらいの大きさまでならセーフなのか、正直これは私にもわかりません。
なぜなら多くの場合、レギュレーションは現場スタッフ(not主催)の現地判断で運用されるからです。
前述した通り、イベントの現場スタッフは主催(にじさんじ)のスタッフではなく、イベント運営会社のスタッフとなります。
基本的にはフラスタ受け取りの判断もそのイベント会社のスタッフさんが行います。
発表されたレギュレーションを根拠としつつ、これだと大きすぎる、これならセーフという基準は、現地スタッフさんのその時の判断になるのです。
予定していたフラスタを置く場所に対して、搬入されたフラスタの数が断然多く、普通に置いたら置ききれないこともあります。
逆にスペースが大きく余っている時もあります。
今の時世柄、あまり密に置くと人がたくさん集まってしまうかもしれない、通路を塞いでしまうとソーシャルディスタンスが保てないかもしれない、そういった判断もあるかもしれません。
すべてはその時々、その場所場所に応じた対応になるということです。
そして、修正を求められる際に根拠として使われるのがレギュレーションです。
220cmだろうと、190cmだろうと、180cmを超えているので修正してください。と言われれば花屋はそこで直すしかありません。
推奨って書いてあったし、10cmくらいは大目に見てもらえませんかなんて言っても、推奨サイズを超えるものは受け取らない可能性があるって書いてありますよね?と言われてしまえばそれで終わりです。
つまり、結局発表されたサイズ規定を守るのが一番間違いがないということです。
よっぽどのことが無い限り、これで受け取ってもらえないということはありません。
参加者さんを募った企画のフラスタで、サイズ規定違反で納品できなかったなんてなってしまったら。
レギュレーションが守られてないフラスタとしてSNS上で晒され、プチ炎上なんてなってしまったら。
さらにそれが飛び火して、そのジャンルやキャストさんにまで悪評を及ぼしてしまったら。
そして、フラスタの受け取り自体NGになってしまったら。
大きくて立派で目立つフラスタを出すこととそれらを、皆さんは天秤にかけられるでしょうか。
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